電子帳簿保存法(2022年1月1日~)
電子取引データの保存(電帳法第7条)
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(以下「電帳法」)
電帳法第7条
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
※電磁的記録を保存”しなければならない” となっているが、宥恕(ゆうじょ)規定(7-10)により、
2023年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして
保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていればよいこととなった。
(事前申請等は不要)
電子取引データとは
・電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方法により行う取引をいいます。
・取引情報とは、取引に関して受領し又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書
その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。(電帳法第2条第1項第6号)
電子取引データの具体例
⑴電子メールで受領した請求書や領収書等のデータ
⑵HPからDLした請求書や領収書等のデータ
⑶HPに表示される請求書や領収書等の画面印刷(ハードコピー)
⑷クラウドサービスの利用
(電子請求書や電子領収書の授受に係るサービス)
(クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードの支払データ、
スマホアプリの決済データ等を活用したサービス)
⑸特定取引のEDIシステムの利用
⑹ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機の利用
⑺請求書や領収書のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
電子取理データの保存要件
⑴改ざん防止のための措置をとる(以下①②③のいずれかの方法)
①タイムスタンプの付与
②履歴が残るシステムでの授受、保存
③改ざん防止のための事務処理規定を定めて守る(サンプル規程のリンク先)
⑵「日付・金額・取引先」で検索できるようにする
専用システムを導入していなくても下記①②いずれかの方法でもよい。
①索引簿を作成する方法(表計算ソフト等で索引簿を作成するなど)
②規則的なファイル名を設定する方法(ファイル名に「日付・金額・取引先」を付す)
なお、下記abの要件を満たす場合には、検索機能の確保は不要です。
a、2年(期)前の売上が1,000万円以下
b、税務調査の際にデータのダウンロードの求め(税務職員への提示等)に対応できる
必要な手続き(届出等)
事前申請等は不要です。
リンク先:0021011-068.pdf (nta.go.jp)
Ⅰ 通則 【制度の概要等】|国税庁 (nta.go.jp)
国税関係帳簿(電帳法第4条第1項)
電帳法第4条第1項
保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。以下この項、次条第一項及び第三項並びに第八条第一項及び第四項において同じ。)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
※電磁的記録の保存を”しなければならない”ではなく”できる”となっている。
国税関係帳簿の具体例
仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など
電子帳簿保存の保存要件に対応するための方法
基本的には電子帳簿保存の保存要件に適合した「会計ソフト」を使用して、上記国税関係帳簿を作成する。
電子帳簿の保存要件
要件 | 優良 帳簿 | その他 帳簿 |
記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる 電子計算処理システムを使用すること | 〇 | ー |
通常業務処理期間を経過した後に入力を行った場合には、その事実を確認できる 電子計算処理システムを使用すること | 〇 | ー |
電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間にお いて、相互にその関連性を確認できること | 〇 | ー |
システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理 マニュアル等)を備え付けること | 〇 | 〇 |
保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操 作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状 態で速やかに出力できるようにしておくこと | 〇 | 〇 |
検索要件①取引年月日、取引金額、取引先により検索できること ②日付又は金額の範囲指定により検索できること ③2以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること | 〇 〇※1 〇※1 | ー |
税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じるこ とができるようにしておくこと | ー※1 | 〇※2 |
応じることができるようにしている場合には、②③の要件が不要。
※2 ”優良”の要件を満たしているときは不要。
必要な手続き(届出等)
・保存要件の”その他帳簿”については特別な手続きは必要ありません。
・保存要件の”優良帳簿”について”優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置等の適用”を受けるためには、所轄税務署長宛にあらかじめ(※)届出書を提出する必要があります。
※軽減措置等の適用を受けようとする国税の法定申告期限までに、その届出書を提出した場合には、あらかじめ、提出があったものとみなされます(したがって提出時期は、適用を受けようとする国税に係る法定申告期限までに提出することになります)。
(注)帳簿の電子保存については、原則、課税期間の途中から適用することはできません。
【QA問6解説】
国税関係帳簿については、課税期間の開始の日にそれが備え付けられ、順次それに取引内容が
記録されていくものであることから、原則的には、課税期間の中途から電磁的記録等による
保存をすることはできないと解されます(取扱通達4-4なお書き)。
電子帳簿保存法関係|国税庁 (nta.go.jp)
記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁 (nta.go.jp)
0018004-061_01.pdf (nta.go.jp)
届出等の様式|国税庁 (nta.go.jp)
国税関係書類(電帳法第4条第2項)
電帳法第4条第2項
保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。
※電磁的記録の保存を”しなければならない”ではなく”できる”となっている。
国税関係書類の具体例
自己がコンピュータを使用して作成する決算関係書類
→貸借対照表、損益計算書、試算表、棚卸表など
自己がコンピュータを使用して作成して取引相手に交付する書類の写し
→見積書、請求書、納品書、領収書などの”控え”
電子書類の保存の要件
要件 | 書類 |
システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理 マニュアル等)を備え付けること | 〇 |
保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作 マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で 速やかに出力できるようにしておくこと | 〇 |
検索要件①取引年月日、取引金額、取引先により検索できること ②日付又は金額の範囲指定により検索できること | ー※1 ー※1 |
税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じること ができるようにしておくこと | 〇※1 |
いる場合には、税務職員による質問審査権に基づく質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じること
ができるようにしておくことの要件が不要。
必要な手続き(届出等)
・電子保存の開始に当たっては、特別な手続きは、必要ありません(届出不要)。
(注)書類の電子保存については、課税期間の中途からでも行うことができます。
【QA問6解説】
国税関係書類については、それが作成されると直ちに保存されるものであることから、
課税期間の中途からでもそれ以後の作成分を電磁的記録等により保存することができ
ることとなります。
書類のスキャナ保存(電帳法第4条第3項)
電帳法第4条第3項
前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。この場合において、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存が当該財務省令で定めるところに従って行われていないとき(当該国税関係書類の保存が行われている場合を除く。)は、当該保存義務者は、当該電磁的記録を保存すべき期間その他の財務省令で定める要件を満たして当該電磁的記録を保存しなければならない。
※電子保存を”しなければならない”ではなく”できる”となっている。
スキャナ保存の対象書類(QA問2)
書類の重要度 (注1) | 書類の性格 | 書類の名称・内容 |
高 | 一連の取引過程の開始時点と 終了時点の取引内容を明らか にする書類で、 取引の中間仮定で作成される 書類の真実性を補完する書類 | ・契約書 ・領収書 及び恒久的施設との間の 内部取引に関して外国法 人等が作成する書類の うちこれらに相当するもの 並びにこれらの写し (注2) |
中 | 一連の取引の中間仮定で作成 される書類で、所得金額の計算 と直結・連動する書類 | ・預り証 ・借用証書 ・預金通帳 ・小切手 ・約束手形 ・有価証券受渡計算書 ・社債申込書 ・契約の申込書 (定型的約款無し) ・請求書 ・納品書 ・送り状 ・輸出証明書 及び恒久的施設との間の 内部取引に関して外国法 人等が作成する書類の うちこれらに相当するもの 並びにこれらの写し |
低 | 資金の流れや物の流れに 直結・連動しない書類 | ・検収書 ・入庫報告書 ・貨物受領証 ・見積書 ・注文書 ・契約の申込書 (定型的約款有り) 及びこれらの写し |
国税庁長官が定める書類以外の書類)、重要度が低のものが一般書類(規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定める
書類)です。
(注2)2015年9月30日前に行われた承認申請については、記載された契約金額又は受取金額が3万円未満の者に限ります。
(注3)2015年9月30日前に行われた承認申請については、タイムスタンプの要件は不要です。
スキャナ保存対象外の帳簿と書類
帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、一定の取引に関して作成されたその他の帳簿 |
計算、整理又は決算関係書類 | 棚卸表、貸借対照表・損益計算書 計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類 |
スキャナ保存の要件
重要書類(高・中) | 一般書類(低) | |
書類の区分 | ・資金や物の流れに直結・連動する書類 | ・資金や物の流れに直結・連動しない書類 |
契約書、納品書、請求書、領収書など | 見積書、注文書、検収所など | |
入力期間 の制限 |
・早期入力方式 ・業務処理サイクル方式 |
|
ー | ・適時入力方式も可※1 | |
解像度、 階調 |
・解像度が200DPI相当以上 ・24ビットカラー |
・解像度が200DPI相当以上 ・24ビットカラー 白黒階調(グレースケール)も可※1 |
タイムスタンプ の付与 |
・入力期間内にタイムスタンプを、一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に付すこと (タイムスタンプは一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るもので、 電磁的記録が変更されていないことについて、保存期間を通じて確認することができ、 課税期間中の任意の期間を指定し、一括して検証することができるものに限る) (入力期間内にその国税関係書類の記録事項を入力したことを確認できる場合には、 このタイムスタンプ付与要件に代えることができる) |
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読取情報 の保存 |
・読み取った際の解像度、階調及び当該国税関係書類の大きさに関する情報を保存すること (国税関係書類の受領者等が読み取る場合で、当該国税関係書類の大きさがA4以下 であるときは、大きさに関する情報の保存は不要) |
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ー | 大きさに関する情報の保存は不要※1 | |
ヴァージョン 管理 |
国税関係書類の電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、 これらの事実及び内容を確認することができる電子計算器処理システム又は 訂正又は削除を行うことができない電子計算機処理システムを使用すること |
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入力者等情報 の確認 |
国税関係書類の記録事項の入力を行う者又はそのものを直接監督する者に関する 情報を確認できるようにしておくこと |
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帳簿との 相互関連性の確保 |
国税関係書類の電磁的記録の記録事項と当該国税関係書類に関連する国税関係帳簿の 記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと |
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見読可能装置 の備付け等 |
⑴14インチ(映像面の最大径が35センチ)以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びに操作説明書を備え付けること ⑵電磁的記録について、次のイ~二の状態で、速やかに出力できるようにすること イ 整然とした形式 ロ 当該国税関係書類と同程度に明瞭 ハ 拡大又は縮小して出力することが可能 二 4ポイントの大きさの文字を認識できる |
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ー | 白黒階調(グレースケール)による保存の の場合、ディスプレイ及びプリンタは カラー対応である必要はない※1 |
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電子計算機処理 システムの 概要書等の備付け |
下記書類を備え付けること ・電子計算機処理システムの概要を記載した書類 ・そのシステム開発に際して作成した書類 ・操作説明書 ・電子計算機処理並びに電磁的記録の備付け及び保存に関する 事務手続きを明らかにした書類 |
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検索機能の確保 | 電磁的記録の記録事項について、次の要件による検索ができるようにすること ⑴取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先での検索 ⑵日付又は金額に係る記録事項について範囲を指定しての検索 ⑶2以上の任意の記録事項kを組み合わせての検索 (税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることが できるようにしている場合には、⑵及び⑶の要件は不要) |
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※1 スキャナ保存を行う国税関係書類の電磁的記録の作成及び保存に関する事務手続を明らかにした書類 (これらの事務の責任者が定められているもの)の備付を行う必要があります。 |
必要な手続き(届出等)
・スキャナ保存の開始にあたって、特別な手続きは原則必要ありません。
リンク先:0018004-061_02.pdf (nta.go.jp)