社会保険関連の概要
社会保険とは
社会保険とは、下記の保険制度を指します。
社会保険 ※1 | 社会保険 の種類 | 内容 | 保険者 | 保険料 負担 |
狭義 | 健康保険 | 医療保険のうち、健康保険法に基づくもので、 医療保険事務上の略称は社保と呼ばれ、 国保と呼ばれる地域保健と区別される。 | 全国けんぽ協会 健康保険組合 | 折半 |
介護保険 | 介護を事由として支給される保険。 社会の高齢化に対応し、 H9年(1997年)に国会で介護保険法が制定され、 H12年(2000年)4月1日から施行された。 被保険者は40歳以上 | 市町村 特別区 | 折半 | |
厚生年金保険 | 所得比例型の公的年金、厚生年金保険法等に基づく。 | 日本政府 | 折半 | |
広義 | 雇用保険 | 雇用保険法に基づく、失業・雇用継続等に関する 保険の制度 | 日本政府 | 折半 |
労災保険 | 労働者災害補償保険法に基づき、 業務災害及び通勤災害に遭った労働者 (特別加入者を含む) 又はその遺族に給付を行う、公的保険制度 | 日本政府 | 雇用主 |
事業所の社会保険の加入条件
1、狭義の社会保険(健康保険、厚生年金保険)
1-1、適用事業所
下記①又は②に該当する事業所(事務所を含む)は、事業主や従業員の意思に関係なく、
健康保険・厚生年金保険への加入が法律により定められています。
(健康保険法第3条第3項、健康保険法施行規則第19条、厚生年金保険法第6条、
厚生年金保険法施行規則第13条)
① | ② | |
事業所の主体 | 右記以外 | 国(地方公共団体)又は法人 |
16事業※1 | 製造業、鉱業、電気ガス業、運送業、 貨物積卸し業、物品販売業、金融保険業、 保管賃貸業、媒介斡旋業、集金案内広告業、 清掃業、土木建築業、教育研究調査業、 医療事業、通信報道業、社会福祉事業 | ー |
従業員数 | 常時5人以上を使用 | 常時従業員を使用 (人数要件なし) |
※2:士業は2022年10月施行から適用業種に追加(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf、P28)。
1-2、適用事業所以外の事業所
適用事業所以外の事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、
当該事業所を適用事業所とすることができます。(健康保険法第31条)
適用事業者以外の事業所のうち、
社会保険の任意加入を選択しない従業員4人以下の事業主と従業員は、
国民年金及び国民健康保険に加入することとなります。
2、労働保険(雇用保険、労災保険)
2-1、適用事業所
労働者を1人でも雇用する事業は、その業種や事業規模いかんを問わず、全て適用事業となる。
ただし、農林水産事業のうち一部の事業は、当分の間、任意適用事業(暫定任意適用事業)。
2-2、暫定任意適用事業
個人経営の農林水産業(農業用水供給事業、もやし製造業を除く)で、
雇用している労働者が常時5人未満の事業。
ただし、暫定任意適用事業であっても、雇用する労働者の1/2以上が加入を希望するときは、
労働局長に任意加入の申請を行わなければならない。
認可された場合は加入に同意しなかった労働者も含め、すべて被保険者となる。
2-3、適用単位
雇用保険は、経営組織として独立性をもった事業所単位で適用されます。
支店や工場などでも、人事、経理、経営管理などの面である程度独立して業務を行っていれば
個々に手続を行います。
独立性のない支店等の場合は、ハローワーク(公共職業安定所長)の承認を受けて
本社等で一括して手続を行うことになります。
リンク先:雇用保険事務手続きの手引き、厚生労働省
被保険者の定義
1、狭義の社会保険
特定適用事業所とは、事業主が同一である一又は二以上の適用事業所であって、当該一又は二以上の適用事業所に使用される特定労働者の総数が常時五百人を超えるものの各適用事業所をいう(健康保険法第46条第12項)。
2016年10月~ | 2022年10月~ | 2024年10月~ | |
被保険者数 | 常時500人超 | 常時100人超 | 常時50人超 |
労働時間 | 週の所定労働時間が 20時間以上 | 変更なし | 変更なし |
賃金 | 月額8.8万円以上 | 変更なし | 変更なし |
勤務期間 | 1年以上 | 継続して2か月を超えて 使用される見込み | 変更なし |
適用除外 | 学生 | 変更なし | 変更なし |
特定適用事業所の判定は企業ごとに行うが具体的には以下のいずれかの考え方で判定します。
① 法人事業所の場合、
同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される
厚生年金保険の被保険者の総数が常時 500 人を超えるか否か
② 個人事業所の場合、
適用事業所ごとに使用される
厚生年金保険の被保険者の総数が常時 500 人を超えるか否か
常時500人を超えるとは?
①法人事業所の場合、
同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される
厚生年金保険の被保険者の総数が 12 ヵ月のうち、
6ヵ月以上 500 人を超えることが見込まれる場合を指します。
② 個人事業所の場合、適用事業所ごとに使用される
厚生年金保険の被保険者の総数が 12 ヵ月のうち、
6ヵ月以上 500 人を超えることが見込まれる場合を指します。
リンク先:平成29年4月、短時間労働者の社会保険の適用対象拡大|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
短時間労働者の社会保険適用対象拡大のQA、日本年金機構 (nenkin.go.jp)
2、労働保険(雇用保険、労災保険)
被保険者の範囲
適用事業主に雇用されている労働者は、本人の意思にかかわらず、
原則として被保険者となります。
(適用事業主に個人事業主と法人の区別なし。例外(適用除外)は下記参照)
適用除外(被保険者とならない者)
①1週間の所定労働時間が20時間未満である者
②同一事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者
③季節的に雇用される者であって、以下のイまたはロに該当するもの
イ 4か月以内の期間を定めて雇用される者
ロ 1週間の所定労働時間が 30 時間未満の者
④学校教育法第1条に規定する学校、同法第124条に規定する専修学校または
同法第134条に規定する各種学校の学生または生徒
⑤船員であって、特定漁船以外の漁船に乗り組むために雇用される者
(1年を通じて船員として雇用される場合を除く)
⑥国、都道府県、市区町村等の事業に雇用される者のうち、離職した場合に、
他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、
雇用保険の求職者給付および就職促進給付の内容を超えると認められる者。
リンク先:雇用保険事務手続きの手引き、厚生労働省
被用者保険の強制適用事業所の変遷
年 | 健康保険 | 厚生年金保険 |
1922 T11 | 制度創設 ・強制適用対象 工場法・鉱業法の適用を受ける会社 ・任意包括対象 ①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、 ⑤運送、⑥貨物積卸 | |
1934 S9 | 改正 ・強制適用対象(追加) ①、③、④、⑤運送(陸送のみ)うち 常時5人以上使用する事業所 ・任意包括対象 ②、⑥は変更なし | |
1941 S16 | 改正 ・強制適用対象(追加) ⑤運送(航空機)、⑥、 ⑦焼却・清掃(常時5人以上) ・任意包括対象 ②は変更なし | |
1942 S17 | 改正 ・強制適用対象(追加) 職員健康保険の対象(⑧物の販売、⑨金融・保険、 ⑩保管・運賃、⑪媒介周旋、⑫集金)、 常時5人以上使用する法人(職種問わない) ・任意包括対象 健康保険は業種の限定撤廃。 | 制度創設(労働者年金保険) ・原則、健康保険の強制保険者が被保険者。 ただし、下記は適用除外 常時10人未満の事業所※1、女子等※2。 ※1:中小企業の事業主の保険料負担能力を考慮 ※2:勤続期間が短いことから除外 |
1944 S19 | 厚生年金保険法 ・上記適用除外を強制適用対象者に追加。 ・任意包括制度を設け、健康保険法と 同じ枠組みとなった。 | |
1953 S28 | 改正 ・強制適用対象(追加) ②土木等、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道 ⑯社会福祉(常時5人以上) | |
1969 S44 | 改正 附則で「政府は、常時5人以上の従業員を 使用しないことにより厚生年金保険の適用 事業所とされていない事業所について、他 の社会保険制度との関連も考慮しつつ、適 用事業所とするための効率的方策を調査研 究し、その結果に基づいて、すみやかに、 必要な措置を講ずる」旨を規定。 | |
1984 S59 | 5人未満事業所等のうち 「法人」の事業所を強制適用対象に。 ※強制適用対象は下記。 法人および個人事業主(5人以上) | |
1985 S60 | 5人未満事業所等のうち 「法人」の事業所を強制適用対象に。 | |
2022 R4 | 5人以上の個人事業所の適用業種に下記を追加。 ・弁護士、税理士等の資格を有する者が行う 法律又は会計に係る業務を行う事業 |
リンク先:被用者保険の適用事業所の範囲の見直し 2019年11月3日(mhlw.go.jp)
年金制度改正法(令和2年法律第40号)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
被用者保険の適用範囲の変遷
年金・医療 | 雇用保険 | |
1975 S50 | ・所定労働時間 通常労働者の概ね4分の3以上かつ22時間以上 ・年収:52万円以上 ・雇用期間:反復継続して就労する者であること | |
1980 S55 | 厚生年金保険及び健康保険について、 通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数の 概ね4分の3以上であれば適用されることを明確化 (参考) ・8H×3/4×5日=30H ・5日×3/4=3.75日 ・30H/4日=7.5H | |
1989 H1 | ・週所定労働時間:22時間以上 ・年収:90万円以上 ・雇用期間:1年以上(見込) (短時間労働被保険者への拡大) | |
1994 H6 | ・週所定労働時間:20時間以上 ・年収:90万円以上 ・雇用期間:1年以上(見込) | |
2001 H13 | ・週所定労働時間:20時間以上 ・年収要件を廃止 ・雇用期間:1年以上(見込) (登録型派遣労働者、パートタイム労働者 への拡大、業務形態の多様化に対応する 必要性から年収要件廃止) | |
2009 H21 | ・週所定労働時間:20時間以上 ・雇用期間:6か月以上(見込) (急速な雇用情勢の冷え込みを背景に、 非正規労働者に対するセーフティーネット 機能強化への要請の高まりから 雇用期間を緩和) | |
2010 H22 | ・週所定労働時間:20時間以上 ・雇用期間:31日以上(見込) (自民党から民主党へ政権交代、 雇用対策の強化を受けて、雇用期間を緩和) | |
2016 H28 | 厚生年金保険及び健康保険について、 2016年10月1日から下記も加入対象が拡大 ・従業員501人以上の会社 ・週20時間以上 2017年4月から、従業員500人以下の会社で 働く方も、労使合意で社会保険加入可能 (短時間労働者への社会保険が適用拡大) | 65歳以上への雇用保険の適用拡大 ・現行、雇用保険の適用除外となっている 65歳以上の雇用者も、2017年1月1日以降、 雇用保険の適用対象となる。 ・2020年度より64歳以上への雇用保険の 徴収開始 |
2022 R4 | 厚生年金保険及び健康保険について、 2022年10月から下記も加入対象が拡大 ・従業員101人以上の会社 | |
2024 R6 | 厚生年金保険及び健康保険について、 2024年10月から下記も加入対象が拡大 ・従業員51人以上の会社 |
リンク先:被用者保険の適用範囲の主な変遷 (mhlw.go.jp)
平成28年10月(社会保険の適用拡大) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
平成22年雇用保険の適用範囲拡大|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
平成22年雇用保険制度の改正について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
平成28年雇用保険制度の改正内容について |厚生労働省 (mhlw.g
平成29年雇用保険制度の改正内容について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
雇用の変化と社会保障、066-078.pdf (jil.go.jp)
第3号被保険者制度の変遷
1961 S36 | 国民年金 制度発足 | 厚生年金が世帯単位の給付設計のため 被用者年金の被用者の妻については国民年金は任意加入としていた。 |
1985 改正前 | 任意加入とした結果、任意加入しなかった場合に下記の問題点が発生した。 ・妻が国民年金に任意加入した場合には、 夫婦2人分の水準である夫の厚生年金と妻の国民年金が支給され、 世帯でみた所得代替率は、成熟時には109%(※1)と予測された。 (※1)夫が厚生年金40年加入、妻が国民年金40年加入した場合。 ・一方、妻が任意加入していない場合障害年金が支給されず、 さらに、離婚した場合の年金の保障が及ばない。 | |
1985 S60 | 改正後 | 上記問題点への対応。 ・妻の基礎年金を含めた世帯での給付水準が任意加入していない場合の水準に適正化 サラリーマン世帯の専業主婦も、第3号被保険者※1として国民年金の強制加入対象とし、 独自の年金権を付与することで対応。 ・第3号被保険者の基礎年金給付に必要な費用は、独自の保険料負担を求めず、 被用者年金制度全体で負担※2することとした。 |
被扶養配偶者の認定 ・政令により日本年金機構が行う(国民年金法施行令第4条) ・健康保険等の被扶養者の認定の取扱いを勘案して、 年間収入が130万円未満であることが要件とされている※3 | ||
働き方の多様化に伴う被用者保険制度の課題 厚生労働省 2018年12月18日 働きたい人が働きやすい環境を整えるとともに、 短時間労働者について、年金等の保障を厚くする観点から、 被用者保険(年金・医療)の適用拡大。 (第3号被保険者の縮小、法定16業種の個人事業所のうち始業は非適用業種とする)。 適用拡大を考えるにあたっての視点 1、被用者にふさわしい保障の実現 被用者でありながら国民年金(原則定額負担、定額給付)・国民健康保険加入 となっている者に対して、 被用者による支えあいの仕組みである厚生年金保険 による保障(報酬額に応じた労使折半の保険料負担、報酬比例の上乗せ給付)や 健康保険による保障(病気や出産に対する傷病手当金や出産手当金の支給) を提供する。 2.働き方や雇用の選択を歪めない制度の構築 労働者の働き方や企業による雇い方の選択において、社会保険制度における取扱い によって選択を歪められたり、不公平を生じたりすることがないようにし、 働きたい人の能力発揮の機会や企業運営に必要な労働力が確保されやすいようにする。 3.社会保障の機能強化(適切な再分配機能の維持) 今後、マクロ経済スライドにより公的年金の給付水準の調整が進んでいく中、 適用拡大を進めることは、報酬比例給付により保障を厚くすることになる。 加えて、現行の仕組みの下、どのような働き方であっても共通に保障される給付 である基礎年金の水準の確保、及び、年金制度における再分配機能の維持にもつながる。 4.人生100年時代・一億総活躍社会・働き方改革への対応 今後の生産年齢人口の急速な減少、寿命の延伸による人生の長期化、 高齢期の健康や体力の向上により、時間等に制約を持ちこれまで労働参加率が 高くなかった子育て期や中高齢層の女性、高齢期の男性の労働参加が進み、 個々の家計においても、また、経済全体においても、その比重と役割を増していくと 見込まれる。 こうした中で、これまでのように主たる家計維持者のフルタイム就労だけでなく、 多様な働き手による短時間就労も含めた多様な働き方を保障の体系に組み込み、 長期化する人生に対応した年金権の構築や医療保障の充実を可能とする。 |
※2:第3号被保険者については、健康保険と同様に保険料負担を求めず、基礎年金給付に必要な費用は、被用者年金制度全体(第2号被保険者)で負担(国民年金法第94条の3)
※3: 第 3 号被保険者制度が実施される際に、健康保険の被扶養者認定基準(当時 90 万円。平成 5 年度より現在の130 万円)と同額に設定された(「国民年金法における被扶養配偶者の認定基準について」昭和 61 年 3 月 31日庁保発第 13 号各都道府県知事あて社会保険庁年金保険部長通知)。)
リンク先
第3号被保険者制度 (mhlw.go.jp)
働き方の多様化に伴う被用者保険制度の課題(資料2) (mhlw.go.jp)
第3号被保険者をめぐる議論―年金制度の残された課題― (ndl.go.jp)
被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)