消費税(インボイス制度の概要等)
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の概要
2023年10月1日に、消費税の仕入税額控除の方式が、「適格請求書等保存方式」になります。
仕入税額控除の要件の比較表
期間 | ~2019年9月末 | 2019年10月1日 ~2023年9月末 | 2023年10月1日~ |
消費税 | 8% | 10%(軽減税率8%) | 10%(軽減税率8%) |
仕入税額 控除の要件 | 請求書等保存方式 | 区分請求書等保存方式 | 適格請求書等保存方式 (インボイス制度) |
請求書等 記載事項 | ①仕入先の氏名又は名称 ②取引年月日 ③取引内容 ④取引金額 ⑤仕入者の氏名又は名称※1 | ①~⑤は左記と同様 ⑥軽減税率の対象品目である旨 ⑦税率ごとに合計した対価の額 (税込) | ①~⑦は左記と同様 ⑧仕入先の登録番号※2 ⑨適用税率及び税率ごとに 区分した消費税額等 |
帳簿 記載事項 | ①仕入先の氏名又は名称 ②取引年月日 ③取引内容 ④取引金額 | ①②④は左記と同様 ③は下記が追加 軽減税率対象品目は、 軽減税率対象品目である旨の記載 | 左記と同様 |
仕入先 | 課税事業者か否かは 問われない | 課税事業者か否かは 問われない | 税務署に申請して登録を 受けた課税事業者のみ |
免税事業者 からの課税仕入 | 請求書等保存方式の下 仕入税額控除の適用可 | 区分請求書等保存方式の下 仕入税額控除の適用可 | 仕入税額控除の適用不可 ただし、経過措置あり |
経過措置の要件 | ー | ー | 区分記載請求書等と同様の 事項が記載された請求書等 及び経過措置の規定の適用 を受ける旨を記載した帳簿 を保存 |
経過措置の内容 | ー | ー | 下記①②の期間について 仕入税額相当額の一定割合 を控除可能 ①2026年9月30日まで80% ②2029年9月30日まで50% |
※2:税務署に申請し登録を受けた適格請求書発行事業者の登録番号
インボイス制度開始後は、レシートや請求書等にレシート等を発行した事業者の「登録番号」が記載されます。適格請求書(インボイス)を発行できる事業者は課税事業者のみ(免税事業者は発行不可)であり、適格請求書発行事業者は国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で公表されています。
インボイス制度開始による影響(免税事業者の観点)
どのような影響があるか説明する前に、インボイス制度開始前の消費税課税事業者と消費税免税事業者の消費税を納めるまでの流れを説明します。
①基本(「製造業」および「卸・小売業」が、消費税の課税事業者の場合)
「卸・小売業」は、預かった消費税200円から、支払った消費税100円を控除した残額100円について消費税を納付しています。
②インボイス開始前(製造業が免税の場合)
仕入先(製造業)が課税事業者であるか免税事業者であるかに関わらず、購入者側(卸・小売業)は、製造業からの仕入れに係る消費税額を仕入税額控除できます。
したがって、「卸・小売業」は預かった消費税200円から、支払った消費税100を控除した残額の100円を納付することになります。
③インボイス制度開始後(製造業が免税の場合)
購入者側(卸・小売業)は、製造業からの仕入れに係る消費税額を仕入税額控除できない。
したがって、「卸・小売業」は預かった消費税200円を納付することになります。
免税事業者について、インボイス制度開始後に影響がある取引と影響がない取引とは?
影響がある取引
・売上先が課税事業者で簡易課税を選択していない場合。
理由:売上先は免税事業者からの仕入について「仕入税額控除」ができず、その分多くの消費税を納付することになるため。
影響がない取引
・売上先が「消費者、免税事業者、課税事業者だが簡易課税」の場合
理由:消費者、免税事業者は「仕入税額控除」を行わないためです。また、課税事業者だが簡易課税の場合は、免税事業者からの仕入でも仕入税額控除の金額に影響がありません(簡易課税の場合、課税売上高にみなし仕入税率を乗じて仕入税額控除の金額算定)。
免税事業者が取引条件を交渉する場合に参考となる事項
免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A:公正取引委員会 (jftc.go.jp)
インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方
インボイス制度後の免税事業者との建設工事の請負契約に係る建設業法上の考え方の一事例(国土交通省HP)
優越的地位の乱用に関する独占禁止法上の考え方(平成22年公正取引委員会)
下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準:公正取引委員会 (jftc.go.jp)
建設産業・不動産業:建設業法令遵守ガイドライン - 国土交通省 (mlit.go.jp)
適格請求書発行事業者の登録に係る手続
1、登録に係る経過措置を受ける場合
受付開始日 | 2021年10月1日から |
提出期限(原則) | 2023年3月31日まで |
提出期限(例外) | 2023年9月30日まで 原則の期日までに提出できないことにつき、困難な事情がある場合 登録申請書に困難な事情を記載提出する。困難な度合いは問いません。 |
登録の効力発生日 | 2023年10月1日 ※原則の提出期限までに登録の届出を行い、 2023年10月1日より前に登録の通知を受けた場合でも、 登録効力は登録日の2023年10月1日に生じる。 ※例外の提出期限までに登録の届出を行い、 税務署長により登録を受けたときは 2023年10月1日に登録を受けたとみなされます(改正令附則15) |
登録申請から 登録通知までの期間 | 登録申請を書面提出した場合 :1か月程度 登録申請をe-Taxで提出した場合:2週間程度 ※ただし、登録申請書の件数や審査等に要する期間によって異なる。 |
免税事業者が 登録を受ける場合 | 原則、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し課税事業者となる必要があるが、 登録日が2023年10月1日の属する課税期間中である場合は、 「課税選択届出書」を提出しなくても、登録を受けることができる。 |
登録した免税事業者が 消費税申告すべき期間 | 登録日(2023年10月1日)から課税事業者となり、基準期間の課税売上高に関わらず 登録日から課税期間の期末日までの期間について、消費税の申告が必要となる。 |
登録した免税事業者が 簡易課税制度を 選択する場合 | 2023年10月1日の属する期間中に、 その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した 消費税簡易課税制度選択届出書を提出する。 (決算日が12月31日の場合、2023年12月31日までに提出) |
2、登録に係る経過措置を受けない場合(個人事業主の免税事業者)
経過措置を受けない課税期間に登録を受ける場合、原則通り、課税選択届出書の提出が必要。
したがって、免税事業者が課税事業者となることを選択した課税期間の初日から登録を受けようとする場合、その課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに登録申請書を提出しなければならない。(新消法57の2②、新消法70の2)
(参考)
課税期間の初日(2024年1月1日)から登録を受ける場合
2023年11月末までに「登録申請書」を提出しなければならない。
なお、課税選択届出書の期限は、選択しようとする課税期間の初日の前日までのため
2023年11月末までに「課税選択届出書」も一緒に提出することになると考えられる。
3、登録の取りやめをする場合
翌年度から登録の取りやめをする場合
登録取消届出書を、提出日の属する課税期間の末日から起算して30日前の日までに
提出しなければならない。
(提出日の属する課税期間の末日が2025年12月31日の場合、2025年12月1日までに提出)
(2025年12月2日以降に提出した場合、翌々年度から登録取りやめとなる)
4、課税事業者選択不適用届出書の提出期限
選択をやめようとする課税期間の初日の前日までに提出しなければならない。
(基準期間の課税売上高が1000万円超は、消費税納税義務があるため、免税事業者選択不可)
(課税事業者選択届出後2年間(一定の場合は3~4年間)は継続適用となるため留意が必要)
(参考リンク先)
特集 インボイス制度 (nta.go.jp)
適格請求書等保存方式に関するQ&A (nta.go.jp)
消費税率引上げについて : 財務省 (mof.go.jp)
小冊子「今すぐ確認!中小企業・小規模事業者のためのインボイス制度対策」を作成 - 日本商工会議所 (jcci.or.jp)
簡易課税制度について
簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。経理事務処理の負担の減少、税負担が一般課税よりも少なくなる等のメリットがありますが、簡易課税制度を選択した場合は、2年間連続して簡易課税で申告しなければならず、原則課税を選択する方が有利なケースもあります(高額な設備投資をした場合、簡易課税では消費税の控除・還付を受けることができない)。したがって、設備投資等を踏まえ、有利不利を考慮し検討する必要があります。
簡易課税制度を適用するときの事業区分およびみなし仕入率は、次のとおりです。
事業区分 | 業 | 備考 | みなし仕入率 |
第1種事業 | 卸売業 | 卸売業:他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業 | 90% |
第2種事業 | 小売業、農業・林業・漁業 | 小売業:他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第1種事業以外のもの 農業・林業・漁業:飲食料品の譲渡に係る事業に限る | 80% |
第3種事業 | 農業・林業・漁業、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業 | 農業・林業・漁業:飲食料品の譲渡に係る事業を除く 製造業:製造小売業を含みます | 70% |
第4種事業 | 第1種事業~3種事業、第5種事業、第6種事業以外の事業 | 具体的には、飲食店業などです。 なお、第3種事業でも、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業(一人親方など)」は第4種事業となります。 | 60% |
第5種事業 | 運輸通信業、金融業、保険業、サービス業 | サービス業:飲食店業に該当するものを除く | 50% |
第6種事業 | 不動産業 | 40% |
簡易課税制度の適用要件
①基準期間の課税売上高が5,000万円以下(原則)
(特例)
・新たに課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合
・相続、合併、吸収分割により課税事業を選択していた被相続人の事業を承継した場合
②簡易課税制度選択届出書の提出
簡易課税制度の適用時期
・課税期間の課税売上高が5,000万円以下の場合、提出日の属する課税期間の翌課税期間から適用される。したがって、簡易課税を選択しようとする課税期間開始日の前日までに届出を提出。
・(特例)については、提出日の属する課税期間から適用される。
リンク先
No.6505 簡易課税制度|国税庁 (nta.go.jp)
No.6509 簡易課税制度の事業区分|国税庁 (nta.go.jp)
簡易課税の事業区分について(フローチャート)|国税庁 (nta.go.jp)